感想とか

本とかゲームとかの簡単な感想メモを置くところです。

遙かなる時空の中で5 レビュー

※お詫び※
今まで「遥か」と表記して記事更新してましたが、公式を確認したら「遙か」でした。大変申し訳ありません。

約1年(放置期間込で5年)ほどかけてクリアしました「遙かなる時空の中で5」をレビューしたいと思います。

タイトル:遙かなる時空の中で5

購入動機:今まで遙かシリーズを全てクリアしていた友達がギブアップする様を見て「マジかよ私やるわww」などと軽率に宣言したため

簡易あらすじ:海外へ留学していた蓮水ゆきは、帰省のためにいとこの都と兄弟のように育った瞬、祟(そう)と一緒に飛行機に乗っていた。その道すがら飛行機事故に巻き込まれたと思ったら、気付くと見知らぬ場所に一人で立っていて…!?

公式サイト:遙かなる時空の中で5|PSP

以下感想
※くっそ長いので時間のある時に読んでください。


前にも言ったのですが、自分がこのゲームを買った経緯などを簡単に。

私の友人に乙女ゲーをちょこちょこやっている子がおりまして。
去る2011年、このゲームが発売された頃のこと。
彼女から「遙か5、一人もクリアできんかった……」という衝撃の発言が飛び出しました。
というのも、彼女はこのシリーズの1~4までをプレイしていて、全員クリアしていたからです。
何がそんなにひどいのか?と聞いたところ、「ヒロインが無理」とのお答え。

ただ、その子は割と乙女ゲーヒロインに厳しい方。
そしてギャルゲーマーの自分は割と2次元女子に寛容な方だと思っていました(※過去形)
そんなもんで言ってしまったのです。

「そんなひどいとかあるのかwwなら私がやってみるわwww」

そして約4年放置してました!!ごめんな友達!!
お前の言ったこと正しかった!!!!
でも全部クリアしたから大目に見てね!!あと「また遙か5始めたわ」って言ったとき「お前Mなの?」って言われたけど違うから!!自分の心がどれくらい広くなったのか確かめたかっただけだから!!

とまぁ、↑のような経緯でこのゲームを始めたため、レビュー前に2点ほどお断りをば。

・基本的には中立の立場で書くつもりでしたが、書き終った今見直すと完全にボロクソ言ってました。
・良いところは褒めてるつもりです。
・遙かシリーズ初プレイのため、シリーズのお約束などは分かりません。


それでは以下からホントに感想

まずそもそも、このゲームの問題点を上げていくとえらい量になる。
システム、パートボイス、シナリオ、設定の甘さ、その他諸々。
中でも戦闘システムは不親切&意味がないを極めているし、バックログは100行くらいしか戻れないし、設定の甘さと言うか「白龍の力」と「呪詛」という単語はあまりにも便利に使われ過ぎて「一定の規則に従って運用しろよ!!」とプレイ中幾度かキレた程である。
一つ一つあげつらっていくと、それこそ記事一つ分じゃ足りないほどだ。
ただ、それらクソ要素大部分の起点となっているものは主人公の「蓮水ゆき」だと私は思う。

この蓮水ゆき(以下ゆき様)という主人公、一体どこがいけないのか。
それは「言動から読み取れる性格と、作中の他キャラからの評価が一致しない」ということだ。
このゲームは主人公のことは基本褒め褒めのアゲアゲである。攻略対象の八葉はもちろん、いとこの都ちゃんやサブキャラ、その辺のモブに至るまで登場するキャラの95%が褒めてくると言っても過言ではない。ちなみに残りの5%は戦うだけの敵キャラと遙か5で最もまともな敵キャラである。つまり敵以外全員褒めてくる。ふざけてんのか。

ただ、褒め褒めなのは別にいい。自分はあまりプレイしないから知らないだけで、乙女ゲーはそれが標準なのかもしれない。
そして褒め褒め対象であるところのゆき様なのだから、当然それに見合う素晴らしい性格をしているはずである。
果たしてゆき様がどういう子なのか。まず共通ルートの中でキャラクター性が読み取れた部分を下記に示していこう。

  • 飛行機に乗っていて異世界へ飛ばされたとき、「周りに誰もいないし季節も変わってる…」と言うが自分の服装が変わっていることには言及しない
  • 現代(異変が起こっていて、人が1人も居なく荒廃した状態)と異世界(八葉たちの居る幕末)を行き来するが、ゆき様たち現代組の中で唯一異世界へ行けない祟君(※最年少)のことを心配する描写がほぼない。都と瞬に至っては役立たず扱いをする。
  • 見知らぬ異世界で瞬や都に再三注意されるにもかかわらず、何かイベントが発生するたびに一人で飛び出しその現場へ向かおうとする
  • 今まさに戦が起こっているような世界で「誰も傷つけないで」と言う。無抵抗で死ねってこと?
  • その後「世界を守るために誰かと戦わないといけないなら私は戦う」とか言い出す。
  • 急いでどこかへ向かおうとする龍馬に対し「え、もう行っちゃうんですか?」等の「自分を優先することが当然」とでも言わんばかりの発言を繰り出す
  • 高杉晋作と敵対する新選組が鉢合わせてしまったとき、「私はこれ以上誰かが傷つくのは嫌です」という理由で戦闘を止めようとする。(※ただし自分の世界を取り戻すためには戦う)
  • 八葉探しをするとき、特に証拠もなく「○○さんは八葉だと思います」「○○はやっぱり私の八葉な気がする」等の言動を繰り返す
  • 福地桜智が現代を荒廃させたことに加担してしまった件について「桜智さんは何も悪くない」「私のためを思って動いてくれていただけでしょう?」お前のためを思って動けばすべての罪は無かったことになるのか??

どうだろうか。
どう思うだろうか。
人がどう思うのかは分からないが、私が一つ断言できるのは全然人格者じゃないということである。
「驚くほど教養(知識)がなく、何か言われてもまわりが甘いからか特に反省せず同じ行動を繰り返す上に人に意見を押し付けるけど自分は例外というダブスタ、ついでに身の回りの変化に気付く観察力もない」というのが私の共通ルートゆき様評価だ。

ただ、私はダブスタや知識がないことが悪いとは思わない。
むしろ「キャラクターに成長の余地がある」ということであり、物語中での成長とカタルシスに繋がると考えている。そう、決して悪いことだとは思わないのだ。

でも登場人物皆、なぜかゆき様のこと絶賛するんですよねぇ!!!

初めから!!もう会った瞬間から!!褒めてくる奴多すぎだよ!!
なんでそんな褒める!?どこに褒める要素がある!?どうしてもっと冷静に接してこない!?
褒め言葉も可憐とか可愛いとかつぼみとか私の天使とか具体性が一切ないことばかり。それもそのはず、ゆき様の具体的な行動で褒められる箇所など「白龍の神子として仕事してる」の1点のみなのだ。あ、ソレだけじゃなかった。「普通の人も言うような労りをして「とても優しい」「清らか」と褒められる」って言うのもあった。ふざけてんのか。
更にゆき様がにこっとすると「おお、微笑まれたぞ!」などとモブまで言ってくる始末。笑っただけでテンション上がるとかゆき様なんなの?女神?


さて、大分長くなってしまったが↑は共通ルートの話。
ご存じない方に説明すると、遙か5は普通に1周するとバッドENDで終了→そこから白龍の力とゆき様の命を使いながら過去に戻ってハッピーエンドを目指す、という流れ。
もう嫌な予感しかしないが、それぞれキャラクターごとに個別ルートの簡単な感想を記していきたい。ひどいとこだけ抜き出そうかな、と思ったが折角全員クリアしたのでめちゃくちゃ長くなるが全員分書く。

坂本龍馬
遙か5の龍馬は特に土佐弁を使わない、大らかーな雰囲気の兄ちゃん。また、会った瞬間からゆき様褒めに走るメンバーの一人でもある。
特に序章でゆき様が「ここは日本なんですよね」と聞いただけで突如持論を展開し「流石お嬢」とゆき様褒めに持っていったその強引な手腕には目玉飛び出た。その後も会うだけで(※本当に会うだけで)好感度上がっていくし本当すごい。ちょろい。

さて、そんな彼のシナリオは「うっすう……」の一言に尽きる。

初対面の時から過去に出会ったことを匂わせていて、実際若いころに会ったことがある、と言うのがメインのイベントなのだが特段ドラマチックな過去があるわけでもなく、「過去に会っていてその時なんかよく話してたら好きになってた」程度のつながり。
そもそもゆき様と過去に会ったことあるってどういうこと?という件は「龍馬ルートに入ってから色々あって過去に飛ばされたため」という理由がある。あるんだけど、それタイムパラドックス起こしてない?龍馬ルートに入らないと過去に飛ばされないのに、どうして共通ルート(龍馬攻略するか分からない)時点でその記憶あるんだよ。意味不明だよ。
大体その過去に飛ばされる下りもご都合展開で酷い。例としてゆき様が怨霊から襲われそうになったのを龍馬が助けるイベントを抜き出してみる。

天海との決戦直前に助けを求める土地神の元(山奥)へ向かったゆき様ご一行。
そこに行くと泣いている子供がいる。
ゆき様「(おかしい、山奥にこんな小さな子がいるなんて…)」
   「(近くによって確かめよう)」
   「(近くによって確かめよう)」
   「(近くによって確かめよう)」

なんでそうなるんだよ!!!!
思わず大事なこと過ぎて3回書いてしまった。この展開を読んで「バッッッッカじゃねーの???」以外の感想が出てくる人いるの?
しかもこの怨霊から龍馬がゆき様を助けるのだが、結果毒に侵され動けなくなり刺客に襲われ死ぬ。可哀想にも程がある。

このルートで唯一良かった点は「ゆき様から龍馬に告白した」という一点のみ。ちなみにゆき様が自分から告白するのはこのルートだけ!!

メインの風格があると思っていただけに肩透かしもいいところだった。

≪瞬≫
現代枠で、ゆき様と一緒に暮らしている兄のような存在。ゆき様モンペの一角を担ってるが、自分から主張することが少ないためイラつきは少ない。都ちゃんより断然マシ。

最初から自分の出生に秘密があることを匂わせまくっていた瞬兄。
ぶっちゃけると瞬は神子を助ける星の一族であり、敵対する「天海」が作ろうとしている現代と異世界を融合した世界、「合わせ世」の未来からゆき様を助けるために過去へ来たという経歴を持つ。
ゆき様達は合わせ世を阻止するため動いており、ゆき様が目標を達成すると瞬は消えてしまう。いくらでもドラマチックにシナリオを書ける設定だが、瞬よりよほどドラマチックで悲劇的な道をたどるキャラクターが居る。
それが祟だ。

祟は瞬の弟であり、同じく「合わせ世」からやってきている。
瞬は前述のとおり「ゆき様命」のため、自分が何も言わず消えることを受け入れているが、祟はそうではない。「自分は消えたくない」と、生まれた身として当然の願いを胸にゆき様の妨害を行ってくるのだ。
けれど、他八葉のルートではこの事実がゆき様に伝えられることはない。思わせぶりに「僕の幸せのためにやってるんだよ」みたいなことを言って中ボスに徹し、自分の目的を言わないまま倒されて特に言及もされず放置&現代組の誰からも言及されずに終わる。ちなみに他ルートでは当然合わせ世は消滅するので瞬共々死ぬ。可哀そうすぎる。誰よりも優しい(公式設定)ゆき様とは一体何だったのか……
そうやって延々と蔑ろにされ続ける祟。果たして彼が幸せになった場面が遙か5内であるかというと、答えは簡単、一度もない。
瞬ルート/大団円ルートでは、合わせ世が消滅しないため生存はしている。だが、彼が生き残れたことを喜ぶ姿を本編で見ることはない。特に瞬ルートはひどい。

  • バッドEND(瞬を救うことを諦め、合わせ世を消滅させる)→現代に戻ったゆき様が「瞬のことを忘れよう」とするエピローグが入るが、祟のことには一切言及無し
  • 瞬を救うことを決意するゆき様、「私は合わせ世も現代も切り捨てない」と言うにも関わらず祟と戦闘。勝利すると「僕のしたことは無駄だったの!?」と言いながら祟はどこかへ(※どこかは不明)消えていきそこからエピローグに至るまで一切出番なし。

「ゆき様クズじゃん」以外の感想が出てこない。
本当にどうしようもなかったの??だって祟は瞬の弟なんだよ???
兄も兄で最後までゆき様命を貫き通している。ゆき様と敵対する弟に対して「こうなるなら早く斬っておけばよかった」という趣旨のセリフを宣うキャラのことをプレイヤーがどう思うか、考え付かなかったのだろうか。
ゆき様信徒にならないものは悲惨な道を辿る。
祟は遙か5世界の非常な部分をその身に背負わされたキャラクターなのだ……。

と、延々「祟君の扱い可哀そうすぎる」と書いてきたが、その兄の瞬シナリオ全体としてはどうだったか。瞬ルートを簡単にまとめると
 
 ① 瞬と交流を深めつつ、ラスボス(天海)を倒す(1周目)
 ② 天海を倒すと瞬がネタバレ(自分が合わせ世の云々あたり)しつつ消える
 ③ ゆき様、瞬を救うため過去へ戻ることを決意
 ④ 過去へ戻ったゆき様、「瞬兄を助ける」と言うが具体的にどうすればいいか一切決めずに天海戦へ
 ⑤ 天海戦勝利後、何故か天海が合わせ世を残してくれる
 ⑥ やったー瞬も生き残れたよー\(^o^)/
 
という流れ。クソとかどうしようもないとか通り越して「あんだけ重い過去作ってよくもここまで薄っぺらいシナリオ書けたな!!」と逆に感心してしまう。
祟もだが、瞬についても、もう少し面白いシナリオが作れたのではないか。
攻略して幸せになれたはずなのに、やるせなさが残るシナリオだった。

≪福地桜智≫
私は歴史に明るくないが、どうも実在の人物をモデルとしているようである。
ただし、遙か5においての福地桜智は鬼の一族の頭領であり、ゆき様のストーカーだ。
また、ストーカーなだけあってこいつもまた会った瞬間からゆき様信徒として活発に動く。例を挙げると、

・夢の屋と言う名前で瓦版を書いている桜智、号外と称してゆき様を称える瓦版を活版。町人ドン引き
・ゆき様が何かすると日記を取り出しその可愛さを書きつける
・土に名前を書くだけで好感度が上がる
・ゆき様が現代にて「私のおうち」と言うと、その単語を何度も繰り返し言わせようとする(自分の名前が「おうち」のため)

……正直「スタッフはプレイヤーに対して桜智を魅力的に魅せようとしていたか」という根本的な部分に疑問を挟まざるを得ない。だって完全にストーカーなんだもん。
また、ゆき様との関係もお察しのとおり「教祖と信者」そのものである。ただ、その関係がより対等になっていくような展開ならそこまで悪くはならないんじゃ、と思っていた。ただ、そんなことにならないだろうなぁ……とも思っていたし勿論そうなった。

桜智ルートのメインイベントは「呪術によって桜智の体の傷がゆき様へ移ってしまう」という話である。
この呪術はどうやってかけられたのか。答えは「250年前の過去の桜智の先祖と当時の神子にかけられた呪いが強い思いにより復活してしまった」かららしい。うん。……うん?
…えー、何と言うか、過去の神子と血縁でも何でもないゆき様と桜智の間に呪術残ってるとか意味が分からない。その理屈おかしくね??
お陰様で彼のシナリオのメインイベント全てについて「いや、そもそも呪術残ってる訳ねーだろ……」と思ってしまいどうしようもなかった。全てが茶番である。

桜智のゆき様崇拝もルート入ってから加速の一途。「鬼の一族で迫害されたけど、この能力が君のためになるなら釣銭が来るよ」「ゆきちゃんの志は私の志だよ」等々の名言が光る。
ゆき様も、自分の命を削って時空移動するため体調が悪くなっていることについて「ふたつの世界を救うことができたら私の体調も元に戻ると思うの」などという頭のネジ全部抜けてんの?みたいな発言をするし、「呪術」「白龍の力」が都合よく使われ過ぎてるし結局呪術も白龍が解除するから「初めっからそうしろよ」ってなるし、控えめに言ってもめちゃくちゃひどい。
八葉ルートの中でもかなりのクソ度を誇るが、薩長同盟締結にゆき様が一切かかわらないという一点のみは褒めたいと思う。

小松帯刀
薩摩のご家老という立場の小松は序盤はゆき様に厳しめに接してくる。
言動もやや嫌味っぽいところがあり「僕はそんなに暇じゃないよ」と八葉として活動してくれない、という時期もあった。そのため「もしかして小松はゆき様信徒ではないんじゃ……」という期待を一時抱いていたりもした。まぁ共通ルートの5章辺りで既にデレてたからその希望は儚く散ったわけであるが。

小松ルートは「なんかイチャイチャして終わった」というのが一番しっくりくる感想だ。
「現代の図書館へ小松を連れていき、本人の歴史書を読むよう勧める、だが死亡年月のところを見ようとするとその記述を隠そうとするゆき様」、「小松に大量の贈り物を持ってこられたゆき様、一つくらいは貰ってほしいんだけど?と言われ「あ、そうですよね」と謎の上から目線返答」、「薩長同盟のための会議にて、桂と西郷がTPOを考えずゆき様口説きに走る」等のアカンイベントも多い。
だがそれより何より気になるのが「小松からの口説きの多さ」である。
「この子なら己をかけてもいいと思っている」「君はまだ蕾だからね」「僕を本気にさせるなんてね」などなど。これだけ聞けば乙女ゲーっぽい気もするが、20代後半(恐らく)の男性が高校生の女子にかけるセリフだったらもう少し別の何かがあったのではないか。更に言うなら似たような構図のイチャイチャ系イベント絵(ゆき様を小松が抱きしめている感じ)が3枚も連続というのもどうかと思う。

薩摩側のご家老という立場があるにも関わらず、シナリオに寄り添った話は出ずゆき様の尻を追いかけて終わる小松ルート。
目に見えて「ココがダメ」という部分があるわけではなかったが、その分「ただつまらないだけ」のシナリオになってしまったのは皮肉な話である。

沖田総司
幕末の有名人と言えば確実に名前が上がるであろう沖田総司
剣術の強さと若くして病死した悲劇性故か、様々な媒体で題材とされている偉人である。
遙か5の沖田はどんなキャラクターかというと、「自分の意思や感情が薄い」タイプだ。
上官の命令に従い、命を削りながら戦うことに疑問を持たず、自分の望みには気付かない。子供とよく遊んでいるイベントがあるが、それも「子供たちと遊んでいると、何も考えなくていいから、楽なんです」という理由。史実と適合するかは別として、割と王道のキャラ付けがされている。
そうなると、シナリオも「ゆき様との触れ合いの中で自分の意思をもって動くようになる」という王道なものになると予想出来るだろう。普通にやればそこそこ面白いものになるはずなのに、そこは流石の遙か5。合間合間に突っ込みたくなるイベントを入れることで「可はなく不可はある」という出来に仕上げている。例を挙げると、

・沖田にキス(?)されても一切動じも照れもしないゆき様
・沖田ルート固有イベの「天狗による子供神隠し事件」について、事件が起こった理由も解決したのかも何もかも分からないまま終わる
・合間合間にゆき様を口説いてくる土方
・沖田が延々咳込んでいるのにルート後半になるまで「大丈夫ですか?」の一言も声をかけないゆき様
・局長の「上様を守れ」という命令を無視してゆき様を助けに行く沖田
・エンディングで「僕は異世界に残ります」と言って異世界へ残留し分かれたはずなのに、エピローグ時には現代にいるゆき様のところに何故か居る

などなど。
まず異世界に残った沖田がゆき様の力なしにどうやって現代に来たのか本当さっぱりわからないし、途中にシナリオ上マジで無意味なイベントが入ってるし(天狗神隠し事件)、ゆき様と沖田の天然が合わさってえらいことになるしと色々とダメ要素は多い。だが致命傷はない、というのが沖田ルートへの印象である。
そして何よりチナミくんルートよりは断然マシだからいいんだよ。

≪チナミ≫
始めに一つお断りしておきたいのは「筆者はチナミが遙か5の中で一番好き」という点である。
私は「成長型キャラ」が好きだ。
特に自分が未熟であることを認識し、それを克服して成長する様は最高に燃える。
そしてチナミだが、彼もまたその系譜にいると思う。本編中の異人への態度の変化、見た目に似合わず(ゆき様談)本が好きで勉強熱心なところ、周囲の大人キャラから決して無下に扱われず、若さと性格の素直さに期待されるところ。真面目な話、可愛かった。萌えるところもあった。
そんなチナミであるから自分は一番初めに攻略した。
彼のルートはどうだったか。ハッキリ言う、絶許である。

ルート詳細の前に、チナミがどういった立場に置かれていたのかを説明したい。
チナミは水戸藩の出で、兄であるマコト(本名:藤田小四郎)と共に天狗党という尊王攘夷派閥に属していた。だが幕府との騒乱で敗北し、兄や天狗党一派は幕府側、つまり天海の捕虜となってしまう。
そこで天海がチナミに対し「兄たちの命が惜しければ白龍の神子たちに潜り込み、スパイとなれ」と命じたのだった。
この設定を見ただけで大体分かると思うが、兄も天狗党の仲間も全て殺されている。
いや、殺されているならまだいいのかもしれない。彼らは天海の手によって無理やり「陽炎」というゾンビのような存在にされ、天海の手駒として強制的に戦闘させられているのだ。
そしてある時陽炎となった兄と遭遇し、「天海に騙されていた」ということに気付く。その戦闘から逃げ出した兄を追ってとある洞窟まで向かうことになる……

ここまでが共通ルートイベント。ここからはチナミルートと他ルートによって展開が異なっていく。
さて、何が違うのか。ズバリ、チナミの成長のタイミングである。

兄を洞窟に追いかけて行き倒した後、どのルートでも会話が発生する。チナミルートではこうなる。

 チナミがマコトに呼びかけるのを無視してゆき様に「龍の神子……」と声をかけるマコト。
 そして弟に対して一言も声をかけず、ゆき様に対してのみ「叶うことならあなたの八葉になりたかった」と言って消える。

テメェふざけてんのか??という感想しか出てこない。

どうして10年以上一緒にいた弟が傍にいるのに、マコトはたった1回(シナリオ上本当に1回)しか会っていない神子殿との会話を優先するのだろうか。
更にこの後の展開では、ここで「兄の本意」を聞けなかったが為にチナミは天海の(しょうもない)口先にだまくらかされ(※1)「自分のせいで兄が死んだ」と思いこみ記憶喪失になってしまう。
記憶喪失となったらチナミが記憶を取り戻せるよう動くシナリオなのか?と思えば決してそんなことはなく、ゆき様は天海と深夜の密会を繰り返し、マコトが天海の手で陽炎になったことを知りながらも「私に手を差し伸べてくれたよう(※2)に、皆も話し合えば戦わなくていいんじゃないの?」という能天気も真っ青なセリフを吐きだして下さる。
どうしてチナミルートなのにゆき様はチナミくんの味方をしてくれないのだろうか。
そして、どうして最後の最後までチナミくんの告白に対してイエスの返事を返してくれないんだろうか。

ただ、そんなクソみたいな展開の中でも最終的にチナミはきちんと成長してくれる。
「天海は憎い。でもこの国を守りたくて同士と立ち上がったことを思いだした。今回天海を倒しに行くのは復讐のためじゃない」
そんなことを最終章で言ったチナミには「成長した!!カッコいい!!」とキャッキャしたものだった。

しかしここで別のキャラのルートに移ると状況は一変する。前述した「兄との最後の会話イベント」が全く異なるのだ。
チナミルート以外ではこうなる。

 チナミ「オレが不甲斐ないばかりに同志たちも兄上も救えなかった」
 マコト「それは違う、不甲斐ないのは私の方だ、そう自分を責めるものではない」
    「チナミ、私たちの命は失われても志まで消えたわけではない」「後を頼む」

そして最後にゆき様に向かって「あなたの八葉になりたかった」と一言伝え消える。

………………。
………………………………。
………………………………………………。
ねぇ、どうしてコレ本人のルートでできなかったの????

ふざけてんのか!!ふざけてるんだよな個別ルートの方が兄貴がクズとか明らかふざけてるだろ!!!!
これが本人のルートでもあれば天海に何言われても記憶喪失になんかならないだろ。話の展開を作りたいがために本来のイベント(良いもの)を悪い方へ捻じ曲げるとか、仮にも老舗の乙女ゲーメーカーのライターとして恥ずかしくないの?

それでも「チナミルートの方がより成長幅が大きい」というならまだ良かった。
ここで沖田ルートのとある箇所のチナミのセリフを抜き出してみよう。

長州の藩士から「仲間を殺した相手」として恨まれている沖田。
あるとき長州藩士から「我らの怒りを抑えたければ沖田の首を置いていけ」と言われる。
それを飲もうとする沖田とのやり取りがこれである。

チナミ「オレは、命を惜しめとは言わない。だが、相手の言い分を吟味せずただ受け入れるのは間違っている!」
沖田「僕は、任務遂行のため必要なことをするだけですよ」
チナミ「近藤殿が命じたのはお前が死ぬことなのか?違うだろう」
   「お前は最善の道も模索せず楽な道を選ぼうとしているだけだ!それが何を意味するかも考えずに……」
   「今、お前がここで死ねば、後日禍根を残すことになる。長州との戦いが激化するだけだ。」

そしてそこにいる長州藩士に向けてこう言う。

チナミ「長州の方々も……俺は仇討ちを否定はしない。オレ自身、復讐の心はある」
   「だが、機を誤ることは吉田殿の遺志ではないはず。今は、大同団結すべきでしょう」

そして少しの会話の後、長州藩士からこう尋ねられる。
藩士「チナミ、と言ったか。天狗党の生き残りである君に問いたい」
  「天狗党の処刑を命じ、君を罪人と断じたのはあの白衣の宰相殿(天海)と聞いている」
チナミ「……っ!!」
藩士「あの方が憎いか?」
チナミ「………」
   「………憎い…です」
藩士「それでも、君は我らの仇討ちを止めるのだな」
チナミ「…はい。今、沖田も新選組も失えません」
藩士「……わかった。今、しばらくは様子を見よう」

そう、意味不明の記憶喪失をしなくても普通に成長しているのである。
付け加えると、この過程で桂から「人心を一つにまとめる――。東湖先生(チナミの父)の教え…しかとチナミの中に息づいているな……」と褒められていたから私の贔屓目ではない。
更に言えばこれは沖田ルート8章でのイベントであり、チナミルートで言うと天海に意味不明の話術(※1)でやりこめられていたあたりだ。

長くなったが、お分かりいただけただろうか。
つまり、チナミルートとは「本来普通に成長できたものをゆき様とくっつける目的のために成長を無理やり遠回りさせられたルート」なのである。
これを絶許と言わずなんと言えばいいのか。私の貧弱な語彙ではそれ以外の言葉が出てこないのだ。
クソ度で言えばハッキリ言って低い。だが最も許せないのはこのルートであることは疑いようもないだろう(断言)

(※1)天海のしょうもない口先話術は下記のとおり。ツッコミどころ多すぎてどうしてチナミくんが納得したのか、私は未だに納得できていない。

チナミ「何故兄上たちを殺し、陽炎にした!!」
天海「自由に使える駒が欲しかったから…でしょうか」
  「そなたの兄マコトは大人しく駒になろうとはしなかった。だから仕方なかったのです」
  「陽炎にしてしまえば扱いやすいですからね」
   ↓
天海「よどほ私が憎いのですね?ですが、それは責任転嫁というものです」
  「私が手を下さずともそなたの兄は遠からず死んでいました」←ただし、死ぬだけで陽炎にはならない
  「そなたも気付いていたのでしょう?兄が朱雀を使っていたことの報いが何か」
  「そなたは、自分の兄の命が削られていくのをすぐ隣で容認していたのですよ」
  「兄を殺したのは、他の誰でもない……チナミ―――そなたです」←実際処刑を命じたのは天海
チナミ「オレが…兄上を……殺した…?」
   ↓
ゆき様が到着し、チナミをかばう。
天海「…優しい子ですね、神子は。ですが、大事なことを忘れています。私だけが陽炎を生むわけではない、と」←ついさっき自分で「扱いにくかったから陽炎にした」って言ったの忘れている
  「陽炎を生むのは、この世への強い未練…チナミ。そなたの兄の未練は、なんでしょうね?」←あえて言うなら、志半ばでお前に殺されたことじゃないですかね?
   ↓
ゆき様を守ろうとするチナミ。
天海「今さら、神子の八葉気取りですか。兄ほどの力もないというのに…」
  「マコトを八葉に選んでいれば私としてもやりやすかったのですが…理性がなくなった程度で選びなおすとは」←「八葉は宝玉が選ぶ」という設定があるし、ストーリー上で天海にマコトが捕らえられた時には当然八葉が誰かなんぞ分かっていない。後々「四神の札を使えるのは八葉だけ」という設定が出てくるが、「じゃあ宝玉が選ぶって設定はどうなるんだよ」という話である

(※2)ゆき様たちの世界は、天海に騙されて間違った儀式を行った結果崩壊状態となっている


高杉晋作
チナミルート長文の後でまた大物が来てしまい申し訳ないが、このルートがおそらく八葉の中で一番クソである
高杉晋作といえば言わずもがなの幕末期の著名人で、名前程度なら中学を卒業している人は大体知っているだろうが現実の話はさておき、遙か5の高杉の話をする。
このルートの何が悪いと私が考えているか。理由はただ一つ、攻略対象に対して殺意を覚えたのがこのルートだけだったからである。

遙か5では、『薩長同盟を結ぶ』というイベントが大体の個別ルートで発生する。
遙か5の八葉ルートでのラスボスは幕府側であり、そこに立ち向かうため薩摩と長州で結束しよう!という流れになることが多いのだ。
また、このイベントは既に個別に入った状態で起こるためルートによって締結の方法が微妙に異なる。

さて、そんなイベントは高杉ルートではどうだったか。
簡単に分かるよう3つのポイントにまとめたのでご確認いただきたい。

薩長同盟の席にて、
 桂「長州と薩摩は先頃まで対立していた、和解には時間がかかる」
 西郷「一足飛びに同盟という訳にも行かない」
②高杉「俺は以前神子と敵対していたが、今ではご覧のとおりだ(ゆき様の腰に手を回しつつ)」
 ゆき様(※何故か居る)「高杉さん……恥ずかしいです」
 高杉「長州と薩摩にここまで仲良くなれとは流石に言わないが、心を開いた方が得られるものが大きいということだ」
③西郷「高杉殿の言うことはよく分かった」
 桂「まぁ同盟を結ぶのは良しとしよう」

……私は歴史はあまり詳しくない。正直申し上げるとそんなに興味もない。
このレビューを書くためにちまちま人間関係をwikiで調べたりしている程度の知識しかない。
ただ、それでもこの流れは気が狂っているとしか言いようがない。

西郷は一体高杉の何が分かったんだろうか。高杉の頭が神子に洗脳されたとかそういう理解??(クソ失礼)
ていうか他のルートではそんな簡単な感じで納得して無かったよね?あと高杉はどうして「個人の人間関係の変化」を「集団の関係性の変化」と関連付けることが出来ると思ったん。
そもそも、歴史上実在のイベントをこんな色ボケ方向に捻じ曲げることに何も思わなかったの?

私は小説を読んだりゲームをしていても、キャラクターに対してヘイトを貯めることは多くない方だと思っていた。「全ては製作者が居るのだから、キャラの言動への批判は最終的に制作者が受け持つもの」と考えているからだ。
しかし、高杉ルートをやって「そんなん綺麗事だったな……」と感じた。
結局瞬発的な怒りは目の前にあるものに当てられてしまう。その制作背景なんかに目を向ける暇なんてないのだ。
つまり何が言いたいかって、あの時は本当殺意しかなかったってことだ

ただ、それでも一つ言いたいのは、高杉ルート全てが悪かった訳ではないという点である。
高杉に変装用の着物を縫おうとしたゆき様も良かったし、それが1日で出来なくてガッカリしてるとこも悪くなかった。それを見た高杉が礼を言うのも可愛いと思った。
高杉が一句読んだり自分の本名を教えるイベントも「攻略しないと出来ない話だな」って思えた。
白龍の力で命が削れていることが分かって、その上で「の世界のために世界の人柱となって消えてくれ」と言われるのも私は決意が感じられて悪くないと思った。

でも、薩長同盟のことを思い出すたびに、私にはもう全てが許せないんだ。

アーネスト・サトウ
アーネストはイギリスの外交官で、日本に対してツンデレなちょっと腹黒系紳士である。
そして遙か5で数少ない「良かった」カウントに入れられるルートだ。
 ※私の攻略順はチナミ→高杉→アーネストだったため若干甘め評価の可能性はあります

アーネストルートは、簡単に言うと「薩長同盟締結に向けアーネストとゆき様、八葉が協力し、仲が深まっていく」というものである。
何が良いかって、きちんと「仲間」や「周囲との人間関係」に気を配っていることだ。
いくつか良かったと感じたイベントを抜粋しよう。

薩長同盟のため西郷や桂を納得させるイベントで、(展開に難はありつつも)活躍するアーネスト
・八葉全員で「これからの政治」について会話するイベントがある
・英語に興味を示すチナミくんと、それに期待する周囲の大人という構図。どうしてチナミルートでこういうのやってくれなかったんですか…
・アーネストから「八葉があの人たちで良かった」という発言が出る
・「異世界の人が好き、私に出来ることがあるならやってみたい」というゆき様に対しアーネスト「それは少し分かる気がします、八葉の人達がまさにそうですから」
・イギリス大使から「薩長同盟に協力するより幕府側につけ」と言われた後の会話で
 アーネスト「私を斬りますか」
 チナミ「今更お前を斬れるか!」
 というやり取りがあってどうしてこういうの他のルートでもできなかったのかと小一時間(ry
・ゆき様から「離れていかないで」と語りかけられたアーネスト
 「生まれ育った祖国と同じくらい、この国が、八葉の皆さんとあなたが大切なんだと気付いてしまった」
 「答えはずっと前、この国に来た時から出ていたのに」
 「あれほどこの国が嫌いだったのに、今は、あなたの八葉に選ばれたこと、素晴らしい仲間と共にこの国を守る役目を仰せつかったことを神に感謝しています」
 やや大げさではあるけど、それなりに積み重ねもあるから私は納得した。
薩長同盟締結のため、八葉たちがそれぞれ個別に役目をもって動いている。高杉ルートの後だとそれだけで感動しそうになる
・ゆき様「アーネストが八葉である理由が分かったよ」
 「多分、みんなの懸け橋になれるからだったんじゃないかな」
 「この国の人だけだったらバラバラで、きっとこんなに上手くまとまらなかった」
 「アーネストがいたから、他の国の事を知ることが出来た」
 「自分の国のダメなとこが分かって、外国への誤解も解けて」
 「仲が悪かった薩摩と長州も手を結べた」
 「アーネストがいたから八葉の皆も仲良くなれたんだと思う」
 これが遙か5でのゆき様の名言(良い方)

書き出してみると意外と多いね!
高杉ルート直後にやったせいか、世界のために『薩長同盟を全員で乗り切ろう』という部分を見せてくれただけでオッケーです。満足した。
私は「周囲との人間関係がキャラを成立させる」と思っているので、人間関係を築いていく過程があると、まぁ割と色々許せてしまうところがある。なので人によっては甘め評価と感じるかもしれないが、自分としては八葉たちの中では最も良かったルートなのだ。
アクロバティック薩長同盟の記憶を拭ってくれて本当にありがとう。

≪都≫
さて、長かったキャラ別感想もとうとう残り2人。
次は「ゆき様モンペ過激派」こと黒龍の神子の都である。
都は現代組で、「ゆきは悪くないだろ」「ゆきは私の天使」などというゆき様擁護芸や、それに伴う他者煽り芸(主な被害者:チナミ)、他には「なんだあいつ、感じ悪いな」という「お前が言うな」芸など、数々の言動でプレイ中私の神経をガンガン逆撫でしてきた。
別にゆき様を注意するチナミくんを散々煽ってきたからイラッとしたとかそんな理由では決してない。

序盤プレイ時から「遙か5の戦犯は都だ」と私は発言している。勿論、今も「序盤に関するうざさ、ひどさ」が目減りするとは思っていない。だがしかし、攻略してみると割かし良い方のシナリオに入っていたのである。

恋愛ゲームは「攻略対象の抱える問題を一緒に乗り越える」展開が多いと思う。
私が共通プレイ中に「都の問題」として見ていたものは下記の3点。

  1. ゆき様への依存がひどい。
  2. ゆき様への過保護がひどい。
  3. 他人への配慮や言動が足りない。

人によって良シナリオの定義は異なるだろうが、自分としては「この3点を最終的に克服できている、あるいはそうなった理由が納得できる」ということがマイ良シナリオ定義だ。
さて、その点で見ていくとまず①と②、何故こうなったのかについてはシナリオ中に説明がつく。
また、最終的には克服もされていくだろう、と思わせるエンディングになっている。
③についても、最終的に八葉たちに感謝の言葉を述べているので甘めに見ればオッケーなのだ。
以上の点をもって、私の中では「良かった」の基準をクリアしている。

だが、全て良シナリオだったか?と言われるとそんなことはない。
まずこのルート、問題の1つが都の一人喋りがグダグダ長すぎるし女々しすぎることだと思う。
他ルートでは攻略キャラの一人称視点なんてほっとんどないのに、都ルートでは「お前が主人公か?」って位都が心の声を吐露しまくる。しかもそれがもう死ぬほど女々しいのだ。
いくつか例を挙げてみる。

・「(私は、役立たずの黒龍の神子)」
・龍馬と小松によるゆき様アゲ会話を聞いた都「(私の天使を、取るな!)」
・ゆき様が一人で怨霊に対応するのを見たとき
 「(天使は、私が居なくてもひとりで飛べるんだ…)」
・高杉に「お前は蓮水を守りたいからではなく、手元に置いておきたいから縛っているだけだろう」と言われた直後
 「(あの子を一人外に出したら、ほかの鳥と一緒に空高く羽ばたいて…)
  (飛べない鳥を忘れて地上に置いていくだろうから)
  (だから、天使を籠の中に入れて、縛めた…私のそばから逃げないように)」
 「(もし、私の天使が全てを一人でやるようになったら…)
  (私の天使が、私から離れたら…)
  (私は、またひとりぼっちになるから)」

わー、女々しい♪
思わずこっちも女子女子した反応を示したくなるような女々しさである。サバサバとした言動の女が実はとても(悪い意味で)女子っぽいというのは現実と創作のどちらでもままある話だが、まさしくその通りと言わざるを得ない。

追加でもうひとつ、「私の天使呼びがうざい」という問題を挙げたい。
人によっては「いや、それお前の好き嫌いじゃん」と思う方もいるかもしれない。だが少し待ってほしい、他の個別より短いルート(2章分、時間で約1~2時間)の中で24回も(私調べ)「私の天使」を連呼されたら誰だって「うぜぇ!!」ってなるよ(断言)。

もう少し共通時点からの調理の仕方が上手かったらアーネストと同じくらいほめていたと思う。
ただ、私が読んでいた限りかなりガチ百合気味の展開だったのだが、これは乙女ゲーとして望まれているものなのか?
その辺がいまいち分からないのだった。

≪天海≫
最後の最後は天海である。
天海は公儀に仕える宰相であり、「合わせ世」という世界の狭間の神であり、八葉ルートでのラスボスという立ち位置のキャラクターである。
更に言えば敵でありながらゆき様教の信徒の一人であり、「私の神子」と呼び散々甘やかしをかけてくる。遙か5にはゆき様教の信徒しかいないと言うことがハッキリわかるね。ちなみに天海がゆき様に入れ込んだ理由も「一目ぼれ」みたいなもの(としか思えない)から本当よく分かんないよね。

天海の目的は「現代」と「異世界」を融合して、自らの世界の合わせ世を出現させることだ。
世界が融合すると世界はめちゃくちゃになってしまうため、幾度か述べたように八葉やゆき様ご一行からすると敵だ。
しかしそこは攻略対象。
本人ルート以外でも「何か事情がありますよー」の雰囲気をガンガン出してくる。そして一応事情もあるのだが、その辺はこのルートのクソさには一切関わってこないのでガッツリカットする。

天海ルートが良いか悪いかで言うと、自分としてはダメとしか言いようがない。
何がダメか。
イベント?勿論それもある。
雑な設定?そんなん遙か5全体的にそうだ。
種々の原因がある中、天海ルートで私が最もダメだと思ったもの。
それは主人公の「蓮水ゆき」の言動である。

だが、お分かりかも知れないがゆき様の言動は大体のルートでひどい。
共通では「誰も傷つけないで」とか言いながら高杉ルートに入ると戦うことや武器購入にケチをつけることはなくなるし、キスされかけても無反応な時もあれば顔を近づけられるだけで照れるときもあるという言動の矛盾、天海が敵と分かってからも密会し続ける(しかもそのことを誰にも言わない) etcetc……。
だが、それを超える程度にはこのルートのゆき様はひどい。
どんどん抜粋していこう。

・天海と密会をするゆき様(※どのルートでもしている)、現場を高杉に見られて「疑いを招くような行動は慎むことだ」と言われても密会を続ける(その数4回)
・八葉と会話中に天海をかばうような発言をするゆき様に対し、チナミ「やめろ!天海、天海って何でそうあいつの方ばかり持つんだ!」
 →全くその通りである
・チナミとの会話イベントが発生
 「兄上をあんな目にあわせたのは天海だ!!」※マコト陽炎化イベントはこのルートでも発生
 「それなのにお前は幕臣に連れ去られた時も天海、天海って…」
 「お前は本当に分かっているのか?本気で世界を守る気があるのか?」
 「お前は甘い!天海は人の命なんて何とも思ってないんだ」
 これに対する回答が↓
 「でも、天海は私を助けてくれた……」「そんなひどい人じゃないと思う」
 →ひどい人じゃない(ただし他人を処刑して無理やりゾンビみたいにしてこき使っている)
・↑の会話イベントにて、ゆき様「世界を守るためなら、天海とだって……」と発言するにとどまり、「天海と戦う」とは断言しない
・更に↑の会話後、チナミが「疑って悪かった」と謝罪してくるのを聞いてもなお
 「(私が天海を突き放してしまったら天海のことを分かってあげられる人は誰もいない)」
 「(…天海ともっと話がしたい)」
 「(天海の本当の気持ちを知れば私にできることが見つかるかもしれないのに)」
 などと宣う。この女、一切反省していない。
・天海と密会しているときに「君が気にしているのは私とこうしていることが仲間に知られないかと言うことだ」と言われたゆき様、「どうしてそんなことを言うの?そんな意味じゃないのに…」
 →逆にそんな意味が一切なかったら八葉のこと蔑ろにしすぎだと思う
・↑とは別のとき、深夜に天海と会ったゆき様が「八葉が目を覚ます前に戻らないと」って言うの最高に姑息

もう、ほんと、ほんとさすゆきだわ!!!!
よくこんなひどい展開考え付くね!?ていうか何なの、なんでチナミくんとマコトはこんな存在を蔑ろにされているの!?ライターはチナミくんのこと嫌いなの!?!?!

まぁオチも大概なのだが、この過程のゆき様の八葉の天然裏切りっぷりは実にすごい。ある意味見物であった。

このゲームの制作陣は、ゆき様を一体どういう子にしたかったのか。
一番初めに感じた疑問に決着がつかないままであり、いっそ清々しささえ覚えたが絶対に錯覚である。


総括

正直、このゲームを初見で掴んだら普通にやめていたと思う。
選択肢の意味がない、言動がお花畑、すごい鈍さ、言うことがコロコロ変わる、様々な人からアゲアゲな割にその評価に見合っていない。
「これくらい大丈夫だよ」って方はその寛容な心を大事に生きていってほしい。私はムリだわ。

でも、元々「そういうもの」と覚悟のうえで進めるとそれなりに楽しくやっていたことは間違いない。
高杉ルートの薩長同盟に殺意がわいたのは事実だが、小松ルートの平坦さの前ではあのジェットコースター的展開が恋しくなったのもまた事実なのだ。
そしてその中にある少しの良さに癒されたり、チナミくんの三つ編み掴み照れ顔立ち絵に癒されたり、失敗して素直に反省するとこにニヤニヤしたり外人との接し方の変化を楽しんだり、成長してかっこよくなって「いいね!!」ってしたり新キャストの遙か祭り2016に行ってチナミくんにキャッキャしたりしたのも事実なんだ!!
※ハマってないです

「乙女ゲー」という楽しみ方は全然していなかったかもしれないが、すべてのルートをプレイして全力でこのゲームをエンジョイしたと思う。
人に勧めるようなゲームではない。でも、クソゲーと世間で言われることが多くても、本当に悪いとこだけじゃないってことが身をもって分かって良かった。
1年間ありがとう、遙かなる時空の中で5。


でもやっぱクソゲーだよ!